単なるグルメ漫画ではない『美味しんぼ』

グルメ漫画の金字塔と言われる『美味しんぼ』ですが、

捕鯨や輸入問題、原発など政治的テーマを扱うことが多く、なかなか硬派な漫画です。

 

この漫画の軸となるのは、

主人公の勤める東西新聞とそのライバル会社である帝国新聞という新聞社がそれぞれ

「究極のメニュー」と「至高のメニュー」作成を目指して

対決を繰り返すというのが大きな筋になっていますが、

単なる美味しい料理紹介ではなく、料理の本質とは何か?を突き詰めた漫画です。

 

仕事術という観点で、料理のし甲斐のある漫画ですが、

今回は漫画で使われたセリフから「人材育成の本質」について紹介します。

 

部下の力を100%引き出せているのか

「このカブは素晴らしいから、持ち味の50%を引き出しただけでも美味しい料理ができる。

だが、50%しか引き出せないのでは料理の負けだ。」

野菜をテーマに対決をした時の主人公山岡のセリフです。

 

潜在能力が100ある部下Aと30ある部下Bがいたとして、

部下Aの力を50、部下Bの力を30引き出せているとします。「部下Bに比べて、

部下Aの方が成果を出しているし、教育がうまくいっているのはAである」と考えがちですが、

それが間違っていると教えてくれるのが前述のセリフです。

 

潜在能力というのは目に見えるわけではないので難しいですが、

「部下の可能性を信じ、まだ引き出せていない力があるのではないか」と常に考え、

教育していく必要があります。

 

潜在能力とは?良い教育とは何か?

「大地の赤」というトマトを扱った話に、教育の本質を考えさせられる話がありました。

土や肥料にこだわり、手間をかけ、摘みたてのトマトを飛行機で運ばせる。

そんなトマトを最高のトマトだと言う見解に対して、主人公山岡はそうでないと否定します。

 

山岡が最高のトマトと言うのは、緑健農法と呼ばれる手法で作られたトマト。

その作り方はシンプルで、トマトの原産地であるアンデス山脈の環境に近い環境を作り出し、

そこで育てるだけ。雨が少なく、痩せた土地が多いアンデス山脈に合わせ、

水や肥料も必要最小限しか与えません。そんな環境で育ったトマトが、

水や栄養を吸収するために根を伸ばし、必死で成長することで、

お金と手間をかけたトマトの何倍も甘く、美味しくなるのです。

 

そのシーンで一本取られた山岡のライバルが発したセリフが

「旨いのはトマト自身の手柄じゃないか、作った人間が偉い訳じゃない。」というセリフ。

これに対して、この農法を推奨している先生が

「そうです。トマトがえらいのです。私たちは何もしていません。」と回答します。

 

この回答に教育の本質が表れているように思います。

教育と言うと「色々なものを与えたり、

良い環境を作ってあげたり…。」と「与えること」に主眼を置いて考えてしまいますが、

「与えないこと」が本人の潜在能力を引き出すために重要なこともあります。

人を教育する立場の人には、是非意識しておいて欲しい視点です。

 

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